【ドラマ】男たちの旅路 第3部

警備会社に勤務する吉岡は、筋金入りのガードマン。特攻隊の生き残りの戦中派で現在50歳。いまどきの若者の無責任な言動に我慢がならず、「若い奴は嫌いだ」と言い放つ。脚本家・山田太一が鶴田浩二演じる戦中派のガードマンを主人公に、戦後生まれの若い世代との葛藤を描き大きな話題を呼んだドラマシリーズ。第3部の三つのエピソード。

【レギュラー出演】
鶴田浩二(吉岡晋太郎[指令補]) 水谷豊(杉本陽平)
桃井かおり(島津悦子) 柴俊夫(鮫島壮十郎)
金井大(田中先任長) 橋爪功(大沢司令補)
池部良(小田社長)

【スタッフ】
脚本:山田太一 製作:近藤晋 演出:中村克史
音楽:ミッキー吉野 演奏:ミッキー吉野グループ(ゴダイゴ)

第1話 シルバー・シート

1977年11月12日放送
【主な出演】
志村喬(本木) 笠智衆(門前) 加藤嘉(辻本)
藤原釜足(須田) 殿山泰司(曽根)
佐々木孝丸(高田院長) 新村礼子(老婆)
鶴田忍(警備士)

<あらすじ>
陽平と悦子は空港警備で本木という老人と出会う。誰彼となく話しかけたがる本木は、他のガードマンから疎まれており、陽平と悦子も彼を避けてしまうのだった。ある日、本木が空港内で突然倒れ、帰らぬ人となってしまう。後ろめたさを感じた陽平と悦子は、彼のいた老人ホームを訪れ、友人の老人たちから思わぬ歓待を受けるが…。

<みどころ>
◆都電車中での門前、辻本、曽根、須田の老人たちと吉岡との話し合い
男たちの旅路 - シルバー・シート門前が吉岡を試すように、「何を要求したかったか分かりますか?」と、質問するが、吉岡は、「何か精神的なことではないか。と言う程度で…。」と、答えるだけだった。
辻本が、「年を取ると言うことが、年を取るまでわからない。人ごとみたいに思っている。あっという間に自分のことなんでね。ただ世間のね、重みになってしまう。仕事がしたくても、場もないし、力もない。大体、仕事に喜びを感じなくなってくる。名誉なんてものの虚しさがわかってくる。」と言い、 男たちの旅路 - シルバー・シート門前も「(年を取ると)自分を必要としてくれる他人(ひと)がいません。私は他人(ひと)に愛情を感じます。しかし、私が愛されることはない。捨てられた人間です。いずれあんたも使い捨てられるでしょう。しかし、年を取った人間はね、あんたがたが小さい頃、この電車を動かしていた人間です。」と、話す。男たちの旅路 - シルバー・シート
辻本が続けて、「踏切を作ったり、学校を作ったり、米を作っていた人間だ。あんたが転んだときに起こしてくれた人間かもしれない。しかし、もう力がなくなってしまった。じいさんになってしまった。するともう誰も敬意を表するものはない。人間はしてきたことで敬意を表されちゃいけないのかね。今はもうろくばあさんでも、りっぱに何人も子どもを育ててきたと言うことで、敬意を表されちゃいけないのかね。空港で亡くなった本木さんにしても、昔の話をするただのじいさんだったかもしれない。

男たちの旅路 - シルバー・シートしかし、昔ねぇ、ロンドンで有能な記者だったことがあるんだ。そう言う過去を大切にしなきゃ、人間の一生っていったいなんだい。年を取れば誰だって衰えるよ。めざましいことはできないよ。しかしねぇ、この人は何かをしてきた人だ。 こうこうこういうことをしてきたってんで敬意を表されちゃいけないのかね。それじゃなきゃ、門前さんが言うように次々に使い捨てられていくだけじゃないの!」と、興奮しながら話す。
吉岡は自分が今でも戦争という物を引きずっている人間で、死んだ友人たちのほんとうの姿を忘れずにいようと思っているが、それを世に訴えるつもりはないことを話し、老人たちに、「誰も、皆さんに敬意を払わないのはご無念でしょう。しかし、それをこういうことで抗議してはりっぱな過去を汚すだけではありませんか?こんなことをした皆さんを世間が敬意を表すると思いますか? 私は間違っているんじゃないかと思いますねぇ。」と、老人たちに言う。
しかし、門前は、「そりゃ理屈だ。あなたの20年後ですよ。20年後は、今のこの私たちと同じです。」と言い、辻本も、「あんた、まだ若いんだ。若いから理屈で納得できる。年寄りのね、無念な寂しさをあんたまだ分からない。20年後には分かる。あんたが言っていることが理屈だと言うことが分かるでしょう。」と、反論する。
男たちの旅路 - シルバー・シートしばらく考えた吉岡は毅然とした態度で、「私は、20年後の覚悟は出来ています。少なくともこんなことはしない。年を取れば分かると言うくらいなら、なぜこんなとこに閉じこもったんです。皆さんは甘えている。何を訴えたかったのかと謎をかけ、年を取ったら分かると突き放すのであれば、何故こんなことをしたんです。通じても通じなくても皆さんの思いを表へ出て言いなさい。そうでなければ、若い連中には皆さんのしたことが、何のことかわかんないでしょう。戸を開けて言うだけはいいなさい。でなきゃ、すねた子どもが押し入れに閉じこもったのと全く変わらないじゃないですか! 戸を開けて、外の連中にしゃべりましょう。」と、老人たちを説得する。
門前は、「私たちはすねて押し入れに閉じこもった子どもです。」と開き直る。辻本は、「通じないことは百も承知だ。はじめからこんなことをしてどうなると思っていなかった。ただ、空港で死んだ本木さんのお骨が帰ってきたときに、寂しくてねぇ。無念でね。悔しくてね。ただ、大人しくばっかしして死んでたまるかと思った。」と言い、男たちの旅路 - シルバー・シート曽根は、「門前さんが、『どうだい、電車をハイジャックしないか』って言い出したときはうれしかったねぇ。ははははは…、ホームに入っていると、万事遠慮がちになるもんでね。こんなことは考えつきもしないやぁ。ぱーっとね、ぱーっと、目の前が広くなったような気がしたよ。久しぶりで目的があった。計画立てながら生き生きしていたねぇ。」と言い、 男たちの旅路 - シルバー・シート須田は、「おまえなぁ、おまえには分からないんだい! そりゃぁ、世話になっているよ。世話になっている人間がこんなことをしちゃぁいけない。税金使ってな、世話になっている人間は大人しくしてりゃぁいいんだ。そんなことはぁ、分かっているんだい。それでもなぁ、それでも、“ワー、ワーっ” って、無茶をやりたくなる年寄りの気持ちを、オメエ…あんたになんか分からないんだ!」と言い、皆、口々に自分たちの思いを吉岡にぶつける。
男たちの旅路 - シルバー・シートそして、最後に門前が吉岡に、「これは老人の要領を得ぬ悪あがきです。黙って警察に引き渡してくれますね。」と、聞くと、吉岡は、「はい。黙って。」と答えた。

 

第2話 墓場の島

1977年11月26日放送
【主な出演】
根津甚八(戸部竜作) 高松英郎(和泉敬吾)
キャンディーズ(歌手)

<あらすじ>
「墓場の島」というデビュー曲が大ヒットし、一躍スターの座についた戸部竜作。彼はマネージャー・和泉の厳しい管理のもと分刻みのスケジュールをこなしていた。竜作のガードを担当することになった陽平は、悪戦苦闘しながらも仕事をこなすうち、いつしか竜作と心を通わせていく。しかし、竜作はある決意を胸に秘めていた。

 

第3話 別離

1977年12月3日放送

<あらすじ>
仕事先の小さな事件をきっかけに、陽平は悦子に自分の気持ちを打ち明けるが、悦子は歯切れ悪く、話しをはぐらかす。悦子の気持ちを測りかねた陽平は、吉岡に彼女の気持ちを確かめてくれるよう、頼み込む。悦子を誘い出し陽平との結婚を勧める吉岡だったが、「断って欲しい」とつれない。その態度から、吉岡は彼女の普通ではない悦子を感じる。

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