【夢現】真夏の朝の怪体験

Image by Kerstin Riemer from Pixabay

 20代の頃、こんな夢を見た。

 朝、目覚まし時計の音でわたしは目を覚ました。しかし、眠い。ぼんやりとベッドに横たわったまま二度寝をするでもなくぼーっとしていた。

 すると、隣の部屋からちらっちらっとこちらを覗く人影が見えたのだ。最初、気のせいかと思っていたがそれが2度、3度と続き、明らかに隣の部屋に誰かがいる気配を感じたのだ。

 わたしは寝ぼけ眼が一気に覚め、
「誰だ!」
 と、叫びベッドから跳ね起き、隣の部屋を急ぎ覗くとそこには白装束の胸元まである長い黒髪の女性が佇んでいたのだ。顔は真っ黒で人相は分からない。不思議と恐怖は起こらなかった。

 そして、わたしがその女性の顔を見ようと近寄ると、その女性は逃げるようにして階段へ向かったのでわたしはその女性を追った。

 ところが、その女性の逃げ足の速いこと速くないこと。ものすごい勢いで風のように階段を駆け下り、正面玄関の扉をバターンと開け、独楽鼠のように外へ疾走して行ったのだった。

 わたしは階段の上からその様子を見ていたが、半開きになった玄関の扉の先の庭ではこちらに背を向けてしゃがんで花壇の手入れをしている母の姿が見えた。

 と、ここで目が覚めたのだが、変な夢を見るものだと思いながら、わたしは眠い身体を起こし階段から1階へ下りようとしてはっとした。階段の先の玄関の扉は半開きで、庭では母がこちらに背を向けてしゃがんで花壇の手入れをしていたのだ。夢とまったく同じ光景で、母の着ているブラウスも同じだったのだ。

 わたしは階段を下りて母に、
「今、玄関から誰か出て行かなかった?」
 と、聞いた。母は、
「え? 誰も出て行かなかったけど。ヘンなこと言うわね」
 と、少々気味悪そうに返事をしたので、わたしもそれ以上は母に聞くことはしなかったし、夢のことも話さなかった。

 それから2、3日して学生時代の同級生から電話があり、Aさんが亡くなったことを知らせてくれた。Aさんはわたしと同じ学科の女性で歳も同じだった。電話をくれた同級生はAさんが医者の誤診で鼻腔がんで亡くなったことと、Aさんがわたしのことを好きだったことも話した。

 わたしはAさんとは学生時代に挨拶を1、2度交わしたくらいだったが、小柄で大人しい印象を与える女性だったことは覚えている。卒業アルバムを開くと、Aさんは夢に現れた女性と同じ長髪だった。夢の女性はAさんだったのだろうか。今でも不思議な体験として記憶に残っている。

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