相合傘

 数日前のこと。10年間勤めた部署から今月転属になった妻が、前部署の送別会に出席していたとき、わたしは近くの熱烈中華食堂で中生に餃子と冷やっこを注文してひとり飲みをしていた。そして、ハイボールを注文した頃に、
「送別会の2次会に顔を出しませんか?」
 と、妻から電話があった。

 わたしはハイボールを飲んだ後に味噌ラーメンで〆て、30分後に2次会のお店に向かうと、妻がお店の前でわたしを出迎えてくれたが、すっかり酩酊していてハイテンションのイェーイ状態だった。わたしが1杯飲んでいる間に3杯は飲む妻にしては珍しいこともあるものだ。わたしは千鳥足の妻の後に続き、妻の会社の人たちのテーブルに案内された。

 ところが、妻はわたしの紹介を終えると、
「それでは、皆さーん! 先に帰りまーーす!!」。
 おい、こら、おれには1杯も飲ませてくれないのか!
 ∑( ̄ロ ̄;)!

 ま、夜も遅いし、明日も仕事だし、妻もこんな状態だからなぁと、お店を出た。

 外は雨。はじめ別々に傘を差したのだが、妻が、
「1本の傘でいいでしょ^^v」
 と、言い出し相合傘になった。

 わたしが傘を持とうとすると、妻は、
「私が傘を持つ」
 と、傘の柄をしっかりと握り締めたのである。わたしが、
「危ないから、おれが持つ!」
 と、再三再四言っても、妻は頑として傘の柄をぎゅっと握りしめて離さないのである。

 因みに、妻は、
「私が傘を持つ」
 とは言っていなかった。正しくは、
「わふぁひが、かしゃをもちゅ…ぅ」
 である。

 妻の気持ちとしては、一応ご主人さまであるわたしに傘を持たせるようなことはできないと言う愛情からなのだろう。

 しかし、かなりのアルコール量から三半規管にダメージをこっ酷く受けている妻は、ひとりではまっすぐに歩くことがままならない、ユーラリユーララユーラララ~に加えて、左手にはトートバッグ、右手にはもう1本の傘を持ち両手が塞がっている。わたしが傘を持ち、妻がわたしの腕を掴んだほうが断然楽だったし安全だったのだ。

 仕方なくわたしが妻の腕をむんずと掴んで妻の歩行をサポートしていたが、妻は憎いほどのお約束通りのイイ女で、ズッコケて転んでくれましてね。

 妻をご存知の方ならご想像できるでしょう。俵差し女子がすっ転んだんです。いやぁ〜豪快でしたよ、痛快でしたよ…いや失礼。わたしもよろけ、丁度わたしたちの後ろから横を通り過ぎようとしていた女性も驚き立ち止まり、
「大丈夫ですか(◎_◎;」
 と、心配してくれましたよ。幸い、ぐでんぐでんの妻の体には力が入っていなかったので、怪我はなく済んだ。

 さて、妻を起き上がらせると、妻はこの期に及んでもまだ自分で傘を持とうとするのである。わたしは少々声を荒らげて、
「また転んだらどうする! 危ないからおれが持つ!」
 と、言っても、妻は頑なに傘をぎゅぎゅっと握り締め、わたしに譲らないのである。ほんと人の言うことを聞かない妻である。ましてや、泥酔して理性が失われ本性丸出しなのでもう手に負えない。

 だから、弱った挙句のわたしは妻に言い放ちましたよ。
「いいかい! 傘てぇのはね、女が開いて、男が差す(挿す)ものなんだよ」
 って。Ψ(`◇´)Ψ

 妻は一瞬考えて、
「アハッ、なるほどね〜」
 と、今までのことがウソのように素直に傘を開放しわたしに渡してれた。

 どう言う納得の仕方だ=3

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