コロッケそばデビュー

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 立ち食いそば屋でコロッケそばを食べるようになったのは短大1年の春だったと記憶する。中高時代も帰宅途中などでときどき寄っていた立ち食いそば屋にもコロッケそばはあったが、コロッケそばは特殊な味覚を持ったマイノリティーが好むもので、わたしには関係ないと見向きもせずに、もっぱら天ぷらそばを注文していた。

 それが、短大1年の春、同じ学科の友人が金がないので昼飯は立ち食いそば屋で済ませたと話したとき、わたしが、
「何を食べたの?」
 と、聞いたら、友人は、
「コロッケそば」
 と、即答したのでわたしが、
「コロッケそば!? そんなの美味しいの?」
 と、少々耳を疑う口調で問うと、友人は、
「うん、美味しいよ」
 と、さらっと返したのだ。わたしは言葉を失うというか、返す言葉もなくふーんだった。

 それからしばらくして、わたしは立ち食いそば屋でいつものように天そばを食べていたとき、お店に入ってきたお客がコロッケそばを注文し、その後のお客もコロッケそばを注文したのだ。

 コロッケそばってそんなに美味しいのか? わたしはコロッケそばが気になりだし、よし、物は試しだ、次に来たときはコロッケそばを食べてみようと思ったのだが、当時のわたしには「コロッケそば」と、注文すること自体に抵抗があったのだ。日本の蕎麦文化を鑑みても、コロッケが温かい汁の日本そばの上に乗せるのはありえないことで、どう考えてもイレギュラーな組み合わせだと思っていたからだ。

 したがって、はじめてコロッケそばを注文したときも、店員に失笑されまわりのお客からは奇異の目で見られるのではないかと思い、ボソボソっとした声で、
「コロッケそば」
 と、注文したのを覚えている。

 さて、七味をかけて、汁をすすり、そばをすすり、追っかけコロッケを一口食べたとき、あたしゃ目から鱗が落ちる思いでしたよ。

 友人が「うん、美味しいよ」と、さらっと返していたが、そんなもので片付けられないこの旨さはなんだ! 高が立ち食いそばの味にコロッケが加わっただけで、もう別物の食べ物のように思えましたよ。決して大げさに言っているのではなく、この時はそう感じたと思う。

 それからはどこの立ち食いそば屋でもコロッケそばを注文するようになり、コロッケそばに飽きたときに天そばか天玉そばを注文する、これの繰り返しのコロッケそば好きになったが、カレー味のコロッケはわたしの口には合わないようだ。げんなりする。

 因みにコロッケそば発祥のお店は、明治18年創業の「そば所 よし田」。コロッケそば1,100円也。

サービス終了のお知らせ
『コロッケそば』発祥の店に行ってみたら…想像していた「コロッケ」と違ったナリ
「いざすーすーめーやキッチン♪ 目指すはジャガイモー♪」コロッケは美味しいナリ。みんなも食べるナリよ。とまぁ、思わずアニメ版『キテレツ大百科』のコロ助気分になっ …
そば所 よし田 (銀座/そば)
★★★☆☆3.47 ■予算(夜):¥1,000~¥1,999

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